営業の武器は特別なトークじゃない|「当たり前を全部やり切る」と、相見積もりで相手が価格を教えてくれる

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私は、喋るのが得意ではありません。B2Bの営業を20年やってきましたが、立て板に水のトークで契約を取った記憶は一度もない。それでも直近2年は売上・利益ともに社内1位、その前も何度も1位、少なくとも4位以内は続けてきました。

武器はひとつだけです。「当たり前を、全部やり切る」。この記事は、製造工場・建設土建・鉄工所を相手に、数十万〜数百万円の機械工具や工事案件を売ってきた私の、地味すぎる営業の記録です。

結論:「この人から買いたい」と思ってもらうのが、最強の営業

売り込みは苦手です。だから20年、やってきたことは「売る」より「寄り添う」でした。どの業種でも同じで、最後に効くのは商品や価格ではなく、「この人から買いたい」と思ってもらえているかどうか。その状態を作るのが、私にとっての営業です。

では、その状態はどう作るのか。特別なことは何もしていません。当たり前を、省かずに全部やる。それだけです。

私がやり切っている「当たり前」5つ

① 急ぎの案件は、その場で在庫と納期を確認して即連絡する

「納期回答の速さ」そのものを競っているわけではありません。大事なのは「急ぎ」と言われた瞬間の初動です。その場で在庫と納期を確認して、すぐ返す。相手が一番困っているのは「今どうなっているか分からない時間」なので、そこを短くします。

② メール返信は当日中、遅くとも翌日

すぐに答えが出ない案件もあります。その時も、「◯日までに必ず回答します」という連絡だけは当日中、遅くとも翌日に返します。返事がないことが、一番相手を不安にさせる。中身が決まっていなくても、期限だけは先に伝える。これだけで信頼の減り方が変わります。

③ 感謝を言葉にする

買ってもらった時、教えてもらった時、紹介してもらった時。当たり前すぎて省かれがちですが、口に出して伝えます。地味ですが、省いた瞬間に相手には伝わります。

④ 名前を呼んで挨拶する——購買権のない人にも

正直に言うと、始めたきっかけは「人を覚えるのが苦手だったから」です。担当するユーザーは100人以上。覚えるために、名前を呼んで挨拶するようにしました。後になって何かの本で「認知+挨拶」がコミュニケーションに効く、と知って、答え合わせになりました。

いまは購買権のある人だけでなく、名前を知らない人でも、訪問先ですれ違えば必ず挨拶します。これが、後で書く「客が客を呼ぶ」につながっていきます。

⑤ 依頼は断らず、代替案を出す

無理な納期や条件を言われても、「できません」で終わらせない。他メーカーの同等品、寸法違い——「これならありますが、いかがですか」と、必ず代わりを出します。断らないのではなく、手ぶらで返さない、という感覚です。

続けると、相見積もりで相手が価格を教えてくれる

この5つを続けていると、相見積もりの場面で、相手がこう言ってくれるようになります。

「◯◯(他社)から◯◯円で回答が来てるんだけど、価格合わせられる?」
「少しだけでいいから、安く出せる?」

同じ場面が何度もあって、正直ひとつに絞れません。これは値切られているのではなく、「あなたから買いたいから、条件を教える」という関係です。特別なトークで勝ち取ったものではなく、当たり前の積み重ねの先に、自然にそうなっていました。

客が客を呼ぶ——挨拶の副産物

名前を呼んで挨拶を続けていると、製造工場なら他の部署から、土建業なら社長から従業員を紹介してもらって、商売が広がることが何度もありました。

おそらく相手の社内で困りごとが起きた時に、「◯◯さんに相談してみたら? たぶん何かアドバイスくれるよ」と言ってもらえているのだと思います。客が客を呼ぶ状態。これは営業トークでは作れません。挨拶の副産物です。

失敗談:配達して伝票を渡すだけになっていた頃

いい話ばかりではありません。ある土建業の社長に対して、物を配達して伝票を渡すだけ、という時期がありました。忙しさを言い訳に、会話も提案もしていなかった。

すると社長からの問い合わせが徐々に減り、私の訪問回数も減り、さらに疎遠になる。その後、社内のキャンペーンのチラシを持って行った時に、「お前、全然来ないからな…」と苦言を呈されました。

それでも、キャンペーン品は買ってくださった。そこから定期的な訪問と商品のPRを続けるうちに日常会話が増え、いまでは「お前に頼みたい」と言ってもらえる関係に戻りました。

学んだのは、関係は放っておくと減るということ。当たり前は「やる」だけでなく「続ける」ところまで含めて当たり前でした。

なぜ「当たり前」が効くのか(私の解釈)

  • 喋るのが苦手だからこそ、聞く力になる:話題を振って、相槌で、相手に気持ちよく喋ってもらう。商談の主役は自分でなくていい。むしろ主役じゃない方がうまくいく
  • 約束を小さく、確実に守り続ける:即連絡・当日返信・代替案。一つひとつは小さいが、外した時に一番信頼が減るのもここ
  • 仕入れ先にも横柄にしない:お客様にだけ丁寧、では続かない。仕入れ先に無理なお願いが通るかどうかは、普段の態度で決まる

部下に伝えていること

いまは課長として6人の部下と一緒に動いています。この話をする時、まず何からやらせるか。答えは「私がやっていることを全部、なるべく」です。特別な技術がいらないから、誰でも今日から始められる。その代わり、1日〜1週間の重点項目だけは先に示して、迷う時間を作らないようにしています。

よくある質問(実体験)

Q. 特別なトークは、本当にいらないのですか?

A. 私には、ありません。喋るのが苦手なまま20年、聞く力と当たり前だけでやってきて、それで社内1位が取れています。

Q. 疎遠になったお客さんとの関係は戻せますか?

A. 戻せました。上に書いた土建業の社長がそうです。苦言をもらった後も、定期的な訪問と商品PRを続けたら、日常会話が戻り、いまは「お前に頼みたい」と言ってもらえています。

Q. 人の名前を覚えるコツは?

A. 覚えてから呼ぶのではなく、覚えるために呼ぶ。私は覚えるのが苦手なので、呼ぶことで覚えました。

まとめ:当たり前を、全部やり切る

  • 急ぎは、その場で確認して即連絡
  • 返信は当日中、遅くとも翌日。答えが出なくても期限だけは伝える
  • 感謝を言葉にする
  • 名前を呼んで挨拶する——購買権のない人にも
  • 断らず、代替案を出す

続けると、相見積もりで相手が価格を教えてくれ、客が客を呼ぶようになります。喋るのが苦手でも、あほなりに、これだけで20年やってこれました。

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